府中市美術館「橋口五葉のデザイン世界」

少し前に府中市美術館で開催中の「橋口五葉のデザイン世界」展に行ってきました。

橋口五葉といえば、夏目漱石の本の装幀を思い浮かべる方も多いかもしれません。

私も橋口五葉の作品を初めて見たのは、確か夏目漱石の特別展で展示されていた「吾輩ハ猫デアル・上編」のジャケット下絵でした。

府中市美術館の窓に貼られた「吾輩ハ猫デアル」のイラスト。

ノスタルジックで可愛いです。

夏目漱石以外にも、泉鏡花など、近代文学の本の装幀を次々と手掛けた五葉ですが、展覧会でも本の装幀画稿や表紙画稿、題字のレンダリングなどが展示されていました。当時の本は今と比べると高価なものであり、そのことが視覚的に実感できるものでした。丁寧に作られた本は美しく、華やかでした。また、「グラフィックデザイン」という言葉が無い時代に、先駆的で芸術的な仕事がなされていたことに驚きました。

画稿は本来、そのものを公開する前提で描かれませんが、それだけに躍動感があり、作者の制作中の息遣いを感じられるような迫力がありました。そして、当たり前ですが、現在の印刷技術が普及する前のことなので、木版で印刷されていたものもあり…。非常に贅沢な重ね刷りがされている作品もありますが、選び抜かれた色彩の調和、インパクト、当時の印刷形態の中から生まれた美を味わって帰ってきました。

また、樋口五葉は文豪たちの本の装幀だけではなく、美しい女性の絵でも有名です。最初の写真の看板、右側部分にある「三越呉服店」のポスターや、浮世絵の研究者でもあった五葉は、女性を描いた新版画を制作し珠玉の作品を残しています。

こちらは展示室の外にあった撮影OKのコーナー。触って開いて読んでも良い夏目漱石の本が復刻(レプリカ)して展示してありました。

リアルに再現してあって(本文までちゃんとありました)びっくり。

開いても閉じても素敵!

当時の人が本を手にした時に感じたワクワク感が体験できました。

他にも、五葉のイラストのスタンプでしおりを作るコーナーがあったり、楽しかったです!

展覧会は7月13日まで開催です。残りの日数は僅かですが、お時間のある方は是非!


SOMPO美術館「藤田嗣治 7つの情熱」展

久しぶりの新宿西口。

都庁を通りすぎて訪れたのは…、

損保ジャパン本社ビルに隣接するのこのオブジェのような建物(画面右下)、SOMPO美術館です。

SOMPO美術館はゴッホの《ひまわり》を所蔵していることで有名です。(こちらは表にある看板で、本物は美術館内で見ました)

今回の展覧会は「藤田嗣治 7つの情熱」展。

今まで藤田嗣治の絵はこちらのブログでも紹介した府中市美術館「藤田嗣治展―東と西を結ぶ絵画―」展や、ポーラ美術館、村内美術館など、幾つもの美術館で見てきましたが、この春「軽井沢安東美術館」に行って、またさらに藤田嗣治の絵を見たくなり、SOMPO美術館に行ってきました。本日(6月22日)までの開催でしたが、数日前に何とか見に行くことができました。展覧会は藤田嗣治の研究第一人者として知られるシルヴィー・ビュイッソン氏の監修で、7つの視点(情熱)から藤田の絵を読み解いて構成されていました。

この展覧会で初めて見る絵も多く、ピカソのアトリエを訪れキュビズムを試みている絵など、藤田独自の画風—いわゆる「乳白色の肌」に代表される―が確立される以前の作品もたっぷり見ることができ、フランスで大成功を収めるまでの藤田の歩みをさらに理解することができました。

そして、上の写真、屋外看板の藤田の《自画像》は彼が70代の時に描いたもの。私も年齢を重ね、作家が晩年に何を描いたかに興味が湧く年頃となりましたが、藤田は子供達、天使、聖母子像などを多く描いています。藤田嗣治の晩年の「情熱」と確かな技術にも心打たれて帰ってきました。

エントランスの窓や壁面のカッティングシートのサインも可愛かったので写してきました。


軽井沢安東美術館

久しぶりのブログアップです。

前回ブログにアップした軽井沢滞在中に軽井沢安東美術館に行ってきました。

軽井沢安東美術館は2022年10月にオープンした藤田嗣治の作品のみを収蔵・展示する美術館です。美術館を創設された安東ご夫妻の長年にわたるコレクションが展示されています。

展覧会「藤田嗣治 猫のいる風景-かたわらの動物たち-」が開催されていました。

愛猫家だった藤田の描く猫たちの豊かな表情やしぐさが生き生きとしていて可愛かったです。私が一番気に入ったのは、擬人化された猫たちの作品、漫画に通じるユーモアがあって、お洒落で、細部まで丁寧に描かれ、様々な発見があるのでずーっと見ていても飽きない絵でした。

藤田嗣治は、東京美術学校(現在の東京藝術大学)を卒業後、1913年にフランスに渡り、線画を生かした表現や「乳白色の下地」で独特の画風を確立し1920年代のヨーロッパ画壇を席巻、時代の寵児となりました。エコール・ド・パリの日本人画家として有名です。

1931年には南米、中米などを旅し個展開催や作品制作を続けますが、その後第二次世界大戦が勃発。日本に帰国し、日本で戦争画を手掛けたことが藤田のその後の人生に影響を及ぼします。1949年に日本を去りNY経由でフランスに渡り、その後フランス国籍を取得、レオナール・フジタとして晩年を生き日本に戻ることはありませんでした。

安東美術館では藤田の生涯の歩みを理解できるように展示が展開されていました。

3点以上の作品を同時にフレーム内に入れ展示風景としての撮影なら可能ということでしたので、美術館内部も撮影させていただきました。


戦争と平和、成功と苦難を経験した藤田は晩年カソリック教徒として受洗し、最後の大仕事となる礼拝堂をランスに建設します。晩年にフジタが描いた聖母子像が礼拝堂をイメージさせる空間に厳かに展示されていました。

藤田がフランスで時代の寵児となっていた1920年代は『チ・カ・ラ』の時代設定と重なりますので、『チ・カ・ラ』を作る上で常に藤田の作品や生涯は私の頭の片隅にありました。達道がフランスに渡って藤田とパリの街ですれ違っていたりしたら面白いなぁとか、勝手に想像したり、達道はこの時代のパリを知っている人なのだということを意識しながら描きました。その藤田だけの作品を展示した美術館に行くことができて嬉しかったです。

絵を鑑賞後、美術館内にあるHARIO CAFEのテラス席で昼食。

とても居心地の良い素敵な美術館ですので、軽井沢に行かれたら皆様も是非!


家具の博物館&村内美術館

やっと、暖かくなってきました。

お正月以来ほぼ冬眠状態(家に籠る日々)だったので、余り話題がありませんでしたが、博物館&美術館に数か所行きました。

「家具の博物館」と「村内美術館」に出かけた時の写真をアップします。

先ずは「家具の博物館」。

フランスベッド株式会社の創業者の発起によって開設され、今に至った博物館なので、フランスベッドの東京工場の敷地内にありました。大きな施設ではないですが、館内にびっしり様々なクラシックな家具が展示されていて充実していました。

平成13年まで大事に使われていた戦前の丈夫なクラッシックなベッドや…、

18世紀ごろのイギリスのラダーバックチェアと18世紀後期ごろのスペインのカップボード。

ラダーは「梯子(はしご)」の意味ですが、椅子の背もたれが確かに梯子みたいですね。

ウィンザーチェア。

17世紀後期にイギリスの地方の町屋や農家で使われ始めた挽物椅子。西部劇の中でよく見かける椅子に似ているのは、その後アメリカにも広がって開拓者たちが愛用したからだと知りました。ルーツはイギリスなんですね。

ゴシック期から20世紀初頭までの欧米のクラッシック椅子を縮尺1/5で再現したミニチュア椅子(菊池コレクション)は精巧で圧巻。

椅子が印象に残りましたが、日本のクラシカルな家具も美しかったです。

また行きたいな。

受付で「モダンチェアの先駆け展」の冊子を見つけたので、即、購入。『チ・カ・ラ』を読んで下さっている皆様には何故私がこれを買ったのかおわかりいただけたと思いますが、フランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテルの椅子が表紙です。『チ・カ・ラ』では現存する当時の椅子を様々な角度で撮影していただいた写真や資料を見て描いたのですが、やっぱりこの角度が一番カッコイイな。

冊子は、今回の展示ではなく過去の展示のものですが、産業革命後の19世紀から20世紀初頭にかけての椅子の歴史が、分かりやすく書かれていて、楽しく学ばせていただきました。

続いては「村内美術館」

前回行ってから20年以上たっていますが…、当時バルビゾン派の絵画をたくさん見せて頂いた良い思い出のある美術館です。

今も、バルビゾン派、印象派、エコール・ド・パリを始めとする絵画も展示されていましたが、今回の目的は椅子や家具の展示です。

上の写真に写っているマッキントッシュの椅子やヤコブセンの椅子など、今でも愛され続けている名作の椅子たちを惚れ惚れと眺めてきました。展示品の中には座れる椅子もありました。

「ベルばら」の一コマのような、ロココ ルイ15世様式の椅子や、

日本の雅やかな家具もありました。

第3章「花鳥風月 日本の雅 西洋の華麗」では、西洋の曲線的で立体的な美と日本の直線的で平面的な美が対照的で面白く、それぞれに美しかったです。

家具と絵画のコラボレーションも美しかったです。

エントランスには、車の展示もありました。

クリーム色の車は、BMW  イセッタ 300 export。

なんと、これ、フロントの部分がドアにもなっていて、向かって左のヘッドライトの右横にあるハンドルを持ってパカっと手前に開いて乗るという、面白い設計でした。

サイドにドアが無い車を初めて見たかも知れません。

 

最後に…、更新が少なかったにもかかわらず、今月も和田尚子の漫画を読んで下さった皆様、当サイトにお越しくださった皆様、ありがとうございました!


夏のお出かけ

あっと言う間に8月です。昨日までに訪れた、三つの展覧会のご紹介。

写真は上から、世田谷美術館で開催された「民芸MINGEI-美は暮らしのなかにある」, 江戸東京たてもの園で開催された「江戸東京博物館コレクション―江戸東京のくらしと乗り物」, 府中市美術館の「自然、生命、平和 私たちは見つめられている―吉田遠志展」です。

「民芸MINGEI」は、日本民藝館所蔵の作品と、静岡市立芹沢銈介美術館所蔵の作品、個人蔵の作品が展示されていました。100年前に柳宗悦が「民衆的工藝=民藝」の考えを唱え、用の美、日常で用いるために作られた手仕事の品々を慈しむ運動が起こりました。暮らしの中で用いられてきた民藝の品々が展示されていましたが、作品の美しさを鑑賞するだけでなく、大事に使ってきた人達の暮らしにも思いをはせるような展覧会でした。

「江戸東京の暮らしと乗り物」展は、江戸時代から明治時代の乗り物を取り上げており、『チ・カ・ラ』の時代の乗り物も展示されていて面白かったです。人力車を製造販売した「秋葉商店」が銀座尾張町の服部時計店の隣にあったことがわかる「秋葉商店 青写真 配置図」の展示が私にはたまらないぐらい楽しく、『チ・カ・ラ』の連載はもう終わりましたが、私はまだ大正時代の街並みの中にもうしばらく居たい気持ちになりました。

「吉田遠志展」は、とても楽しみにしていました。昔から吉田遠志さんのお父さんの吉田博さんの水彩画と木版画が大好きだったのですが、10年ぐらい前に横浜美術館で開催された「魅惑のニッポン木版画」展で吉田遠志さんの作品にも出会い、遠志さんの木版画にも惹かれました。これが木版なの?と、思うほど信じられないぐらいスケールの大きな作品や、木版で可能なのかと思うほど細かな表現があり見ごたえがありました。絵本の原画も素晴らしかったです。

他の二つは終わってしまいましたが、「吉田遠志展」は、9月6日まで開催されています。

夏のお出かけは、静かで涼しい美術館がやっぱりいいな。


多摩湖 第一取水塔

久しぶりに多摩湖に行ってきました。

写真は村山下貯水池(多摩湖)第一取水塔(手前)と第ニ取水塔(奥)。

第一取水塔は大正14年7月完成。

ネオ・ルネッサンス様式の煉瓦造りで、重工なデザインのドーム屋根とアーチ窓が美しく、静かな湖面に映えていました。

東京都の「都選定歴史的建造物」です。


『ベルサイユのばら』展

某日、東京シティビューにて開催中の「誕生50周年記念  ベルサイユのばら展-ベルばらは永遠に-」に行ってきました。

入口から、ベルサイユ宮殿を思わせる華やかな空間に気分も盛り上がり…

池田理代子先生の描いた美しい原画を堪能して、大満足で帰りました。

誕生から50周年、おめでとうございます。

今回の展覧会は『ベルばら』に焦点が当てられているので、まさに『ベルばら』づくし。宝塚の舞台衣装や、アニメの『ベルばら』、話題となった2017年大相撲初場所で土俵に上がった「オスカル様の懸賞幕」も展示されていて、『ベルサイユのばら』ファンには、たまらない展覧会でした!

展覧会について詳しくは下記をご覧ください。

誕生50周年記念 ベルサイユのばら展 -ベルばらは永遠に- オフィシャルホームページ | 開催概要日程・見どころ紹介 (verbaraten.com)

誕生50周年記念 ベルサイユのばら展-ベルばらは永遠に- | 東京シティビュー – TOKYO CITY VIEW (roppongihills.com)


くらもちふさこ先生の展覧会

バタバタと忙しく、ブログの更新がなかなかできずにいました。

写真は、今月の某日に出かけた、弥生美術館の『くらもちふさこ展』です。

行動制限が解除され、凄く久しぶりに友人と待ち合わせて、美術館に行ってきました。

先生の原画はどれも素晴らしかったのですが、別冊マーガレット時代の原稿が、やっぱり私は一番「キュン」ときました。

 

展覧会の詳細は下記の公式HPでご覧ください。

弥生美術館・竹久夢二美術館 (yayoi-yumeji-museum.jp)

予約が必要ですのでご注意ください。

併設されている竹久夢二美術館は、大正ロマンが詰まっていました。

久しぶりにお友達と再会もできて楽しかった!

 


武藤順九彫刻園&森のホテル

梅雨時で、体調が整わない方もいらっしゃると思いますが、いかがお過ごしでしょうか。

私も低気圧と闘いながら、何とか過ごしております。

大雨の被害も出ているようです。気を付けてお過ごしください。

今月は、家族の誕生日で近くのホテルに宿泊しました。

遠くまで行く余裕が無いもので…近場も近場ですが…(笑)。

昭島・昭和の森 武藤順九彫刻園が先月オープンしたばかりでした。

今回は、私は覗いただけなんですが、素敵な雰囲気だったので、せっかくなのでご紹介します。

武藤順九さんは、バチカン市国のローマ法王公邸に作品が永久設置されていることでも知られる世界的な彫刻家。

入口からのぞくとこんな感じで、武蔵野の面影を残す森の中に作品が展示されていました。

昭島市の昭和の森にある、こちらのホテルは東京都なのに、緑がいっぱいで癒されます。

マイナスイオンをいっぱい頂いてきました。

ああ、でも早く梅雨があけて欲しい…。


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