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7月某日、湯河原へ行って来ました。
目的は温泉。
そして美術館。

この川のほとりに
かつて名だたる作家や画家、
文化人達が愛した、由緒ある『天野屋』という
旅館がありました。

階段などに、僅かに、古き佳き時代の面影を残す
かつての「天野屋」本館は、
現在『町立湯河原美術館』となり、
文藝春秋の表紙でも有名な日本画家、
平松礼二さんをはじめ、
湯河原ゆかりの作家達の
作品を展示する美術館となっています。

そこで、竹内栖鳳の絵を見てきました。

竹内栖鳳は、
「東の横山大観、西の竹内栖鳳」と謳われた
戦前の京都画壇を代表する日本画家です。

今から15年程前でしょうか、
ご縁があって、京都の嵯峨にある
栖鳳の別荘、「霞中庵」に招かれ、
数多くの栖鳳の絵を見せて頂いた事がありました。

それ以来、栖鳳は私にとって、特別な日本画家になりました。

『天野屋』は、その、竹内栖鳳が、
病気療養の為、湯河原に赴き、
その後、その一角に住居と画室を構え、
制作に励み、そして、永眠した旅館でもあります。

美術館には
栖鳳の作品も展示されていました。

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竹内栖鳳の絵には、
日本画でありながら、ローマの古城など、
西欧の建物や風景が描かれたものがあります。

栖鳳は1900年のパリ万博視察の為に、
訪れた西欧諸国で、コローやターナー等、西欧絵画の影響を受け、
伝統的な日本画の中に、貪欲に西欧絵画の特質を取り入れ、
新しい画風を作り上げたといわれています。

幕末に生まれ、明治〜大正を生き、
戦前に亡くなった、偉大な画家。

戦後生まれで当たり前に欧米文化の中で育った私。

横山大観や竹内栖鳳ら日本画家よりも、
ピカソやモネ、セザンヌ等、西洋画家の方を身近に感じる事が多い
環境に育った私ですが・・・。

日本が失ったもの、得たもの、守り抜いたもの、
変えたもの、新たに生み出したもの・・・。

計り知れない変化の時代を体験した、
栖鳳が我々に遺してくれたものを観てきました。


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古い旅館が立て直されたり、
明治〜大正の時代を髣髴させる街並みが
少しずつ姿を消しつつある湯河原ですが、

裏道には、まだ、懐かしい光景が・・・。

夜の温泉街もちょこっとだけお散歩しました。